第1回 第2回 第3回
 

現場を見続けてきた技術士に聞く

「わかるスイッチ技術」著 佐々木清人

生産ライン用スイッチ、
技術者泣かせの落とし穴!!

佐々木清人 Kiyoto Sasaki
中央大学工学部精密工学科卒、
技術士。

中小企業大学講師、自動化推進協会理事、融合化・テクノポリスアドバイザー、技術士試験要員を歴任。生産ライン等の自動化システムにおいて指導者的立場に立つ。
著書に「わかるスイッチ技術」(工業調査会刊)、各種技術誌への論文や講演も豊富。
スイス、スペイン、ロシアでの自動化システムの指導など国際的にも活躍している。





生産ラインのスイッチにはエンジニア泣かせの落とし穴がある

自動化ラインの停止の原因の約8割が、スイッチに起因するといったら驚かれるでしょうか。
おそらく、現場の担当者なら「そのとおり」と納得されるかもしれません。
私 はこれまで、いろんな現場、ケースを見させていただきましたが、私に寄せられる声のほとんどは「スイッチに困ってる」というものです。

ご存知のようにラインのスイッチには非接触式センサ接触式センサがありますが、現在もっとも使用されているのは非接触式センサでしょう。
非接触式センサには、光学式、磁界式、電界式、超音波式などがありますが用途も広がっています。
接触式はマイクロスイッチのほか、タッチスイッチと呼ばれるものがあるのですが、ラインで多く使用されているのは非接触式センサです。
両タイプとも一長一短がありますが、非接触式センサは検知範囲を調整できることが普及のいちばんの要因といえるでしょう。
しかし、調整範囲があることが、実はライン停止の原因になっているのです。




設計エンジニアも人間だから、楽な方法を選ぶ

私は興味があって昔のメカを観に行くことがよくあります。

たとえば、自動織機などは100年前の技術ですが、いまのようにシーケンサもないし正確なサーボモーターもない、当然スイッチもなにもないのですが、複雑なジャガード織りを生産できた。これは全部カムとリンクで構成されているんですね。
これはすごい技術ですよ。驚くべき設計力で、エンジニアとして頭が下がる思いです。
現代のエンジニアでこれを設計できる人はもういないでしょう。つまり、いかにエンジニアの想像力が高度だったか、ということなんです。

ところが現代はすべてシーケンサ。

スイッチで情報を取ってコンピュータに入れればそれでいい。
とりわけ生産ラインだと製品の仕様が変わったりすることも多いから、なるべくフレキシブルにしておきたい。
そうすると、エンジニアは図面に取り付けブラケットを描いてそこに「近接センサ」と書き込んでおけばいいわけです。
最近では分業化が進んで現場に行かないエンジニアも増えた。
頭だけで設計しているから、理論上は間違っていなくても現場では何が起こるかわからない。
そういうエンジニアは決まって「どうもスイッチが原因で停まったようです」と連絡を受けて「絶対にそんなことはない」と答えることが多いようです(笑)。




クオリティと信頼、人の安全を確保するのがスイッチ

実は私も過去に大失敗をやらかしたことがあるんですよ。
あるプレスラインのセイフティ機構を光学スイッチで作ったんですが、パートさんが掃除しようと手を入れているときにプレス機が降りてきてしまった。
幸い、大きな力のあるものではなかったのでたいしたケガにならなかったのですが、担当者からすぐ来いと怒鳴られ、飛んで行きましたよ。
「そんなはずはない」と私も答えたひとりです(笑)。

よくよく現場を検証してみるとスイッチに異常はなかった。
しかし取付時にはなかった太陽光線が冬になってラインのコンベアに届いていて、ツヤツヤの表面に反射してスイッチの受光部に当たっているじゃないですか。
これじゃ誤作動するのも当然。取付作業をしたのは夏だったんですね。そういう環境の変化も予想しないと、こういうことが起こるわけです。
特にセイフティ機構は人の安全を担っていますから、誤作動はあってはならない。 働く人の人生を奪いかねないのですから。

スイッチにはスイッチ自体に死角がある場合と、私の場合のように取付方法に問題がある場合とあります。
前述した信号調整範囲のアジャストも、その時は良くてもある一定時間が立つと環境が変わって誤作動を起こすことがある。
室温や温度、あるいはラインで生じる埃、光の干渉、電磁波などのノイズ、長期的にはアンプの電子回路の劣化など、最先端のエレクトロニクスであるからこそ、より多くの環境要因の影響を受けるともいえるのです。

最新機器を搭載したジャンボ機でさえ「携帯電話は使うな」というくらいですから、現代の電磁波ノイズは、かなりの影響を及ぼしているわけです。




シンプルなメカ機構は、それだけ影響因子が少ない

もし、信頼性の高い検出を望んでいるなら、接触式センサを使用することです。
アンプがなければ環境要因によるドリフトは一切考慮する必要はなくなります。
私もかつて図面を引いていましたのでエンジニアの気持ちがわかるつもりですが、より精度の高い生産ラインの図面を引くのはめんどうなんです。
アバウトにできるところはアバウトにしておきたいし、近接センサや非接触式センサを使用したくもなるのです。

もちろん非接触式センサがいけない、ということではありません。
作動点の領域が広いということは、それだけ広範囲のパーツや製品に対応できることでもある。
また、現場からニーズが寄せられることもあり、たとえばスイッチの取付ブラケットを自由度の高いものにしまいがちです。
しかし、それが振動などでずれる。また誤作動です。
もともと、人間の目の代わりなのに、スイッチの調整のためにエンジニアを配置しなければならないとなると、人件費はいつまでも下がらないし、なにかあるとラインは停止。
不良パーツのポカよけがだめだと製品の歩留率が上がらない。
いまや膨大な数のスイッチがラインに設置されている。そのスイッチの調整をひとつひとつやっていたら、生産する時間はわずかなものになってしまうでしょう。

メカ式の接触式センサの優れている点は、触れることで検出しますから信号の信頼性が高いということです。
しかし、精度の高い検出を行うためには、スイッチのブラケットやアーム類のメカ機構を考察しなければなりません。接触式センサの設計はシビアでめんどうですが、実は導入後のメンテナンスはきわめて楽なのです。




もう一度見直したい、シンプルなメカ機構

短時間に大量の製品を生産してきた日本も、市場の成熟と低成長率時代に入って生産ラインに対する視点を変えなければならない時代に入りました。これからは、
「いいものを、じっくり設計していけばいいんです」
しかしそのためには、信頼性が高く、高精度スイッチの応用技術が必要です。

日本はエレクトロニクス大国ということもあって、電子機器には絶対の自信があるようですが、もはや盲信に近いレーザースイッチや赤外線スイッチは確かに精度は高いのですが、ラインにおけるスイッチコストも上昇の一途をたどることになります。

この点、1/20のコストで、オイルや粉塵、光や温度などの影響をほとんど受けない接触式センサは、検出精度、という点で、あるいは耐久性や長い期間安定した性能を発揮するという点で優れたものです。
非接触無接点というと半永久的と思う人がおおいようですが実際はアンプの劣化や防水性等で結構寿命が短い場合もあります。
また、信号の検出点が目に見えるという点も、セッティングを容易にします。なにしろ、ワークと触れるところが検出点なのですから。

ストローク式のメカ接点は基本的にダイヤルゲージと同じ原理ですから、0.5ミクロンの精度がアンプなしで出せる。アンプがないということはスペースもとらず、ノイズの影響を受けないということです。
もちろん接触式センサにも、課題はあります。
測定圧を限りなく0に近づけること、より簡単に使用できるブラケット機構の開発などです。

かつての自動織機を設計した技師のように、現場に興味を持ち、メカ機構にチャレンジするのが楽しいというエンジニアが多くなれば、接触式センサを利用した信頼性の高いラインも増えるんじゃないかと思いますよ(談)

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