タッチプローブによる研削盤の「機上測定」とは?

タッチプローブによる研削盤の「機上測定」とは?

ワークの仕上げ加工の品質を握る「CNC平面研削盤」。
研削加工はシビアな精度が求められる一方で、以下のようなことを感じてはいませんか?

  • 研削加工でワークの位置決めに時間がかかっている…」
  • 三次元測定機など機外測定しているが時間がかかる…
  • 測定後の出戻りと追加工をやめたい…」

本記事では、これらの課題をクリアする「機上測定」をテーマに解説していきます。
研削加工を含む製造プロセスを改善したいと考えている方は必見の内容です。

本記事の内容をまとめると

  • 加工の段取り、寸法測定をラクにする方法が分かる
  • なぜ研削盤での「機上測定」が有益なのかが詳しくわかる
  • CNC平面研削盤で機上測定を導入する方法が分かる

機上測定とは?機外測定との違い

「機上測定ってよくわからない」、と思う方も多いのではないでしょうか?
簡単におさらいをしてみましょう。

機上測定

機上測定とは、「工作機械の上で行う測定」を意味します。測定対象は、加工物(ワーク)です。
機械とは、本記事では平面研削盤を指しますが、他にもマシニングセンタやCNC旋盤など様々な工作機械で行われます。
測定機器は主に「タッチプローブ」という接触式のセンサを使います。センサがワークに触れたときの機械の位置情報からワーク寸法の測定を行う方法です。(画像1)

タッチプローブによる機上測定
▲画像1:タッチプローブによる研削盤での機上測定

機外測定

対照的に、機外測定は「機械の外で行う測定」を意味します。
加工したワークを工作機械から取り外してから、三次元測定機やシリンダーゲージ、ピンゲージ、ノギスなどの測定器で行う測定方法です。
要求精度によりますが、温度管理された測定室で行われることが一般的で、厳密な測定が可能です。
測定で公差が未達だった場合は、工作機械にワークを戻し追加工を行うことが一般的です。

▲機上測定と機外測定の違い
▲機上測定と機外測定の違い

機上測定…の前に、研削加工サイクルのおさらい

機上測定と機外測定どちらを採用するかで研削盤の加工サイクルの工数は大きく変わります。
前提となる「研削加工のサイクル」について簡単におさらいをします。
主にCNC平面研削盤では、

  • ステップ1:「砥石の当て込み作業※1」による加工開始点の確認
  • ステップ2:被削材 (ワーク)の加工開始点の確認(厚み測定)
  • ステップ3:加工サイクル
  • ステップ4:ワークの厚み測定
  • ステップ5:(厚みが未達の場合)追加工
  • ステップ6:測定、完了

一般的に、上記の1~6ステップ(イラスト参照)を踏んで研削加工を行います。(本記事ではツルーイングやドレスは省略)

このステップ4と6の測定を機外で行うか機上で行うかでこの全プロセスの工数が大きく変わります。

※1【関連記事】「砥石の当て込み作業」を自動化する方法とは?業界初、NC平面研削盤の自動化

機上測定の前に…一般的な研削加工の手順
▲一般的な研削加工の手順

次に上記ステップを、機外測定・機上測定それぞれの測定方法で実施したときの工数を比較検証してみましょう。

工数から見た「機外測定」の隠れたデメリットとは?

通常、加工後にワークを測定し許容公差から外れてしまうと、加工工程にワークを戻し基準を満たすよう追加工を行います。
機外測定では、このプロセスの中に以下のような削減すべき「ムダな工程※1があります。

  • ワークの取り外し作業
  • 人の移動
  • ワークの再度セッティングの段取り作業
  • 測定結果(公差外れ)による出戻り
  • 測定待ちワークの滞留

これらは、出荷までのリードタイム長期化やコストアップに繋がる工数として現場の課題となっています。

※1:ムダな工程…とは?
トヨタ生産方式では、ムダを「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義しており、代表的なものとして以下の7つがある。①作り過ぎのムダ 、②手待ちのムダ、③運搬のムダ、④加工そのもののムダ、⑤在庫のムダ、⑥動作のムダ、⑦不良をつくるムダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』トヨタ生産方式

検証1:機外測定のシミュレーション


簡単な例を使って「機外測定」の工数シミュレーションをしてみましょう。

(例)①加工 ⇒② 測定 ⇒③ 追加工⇒④測定のサイクル

このサイクルでは、

  • 人の移動:3回
  • 段取作業:3回(=加工段取:1回、測定器へのセッティング:2回)※初回の段取りのみ必須

が発生します。(図1参照)
各装置でワークの取付・取り外しや位置決めなどの手のかかる段取り作業が毎回発生しています。

機上測定との比較での機外測定
▲図1 一般的な機外測定を行う加工サイクルのイメージ

これに対して、機上測定ではどれくらい変わるか考えてみましょう。

工数から見た「機上測定」のメリット

次に、タッチプローブを使った「機上測定」の工程とメリットを解説します。
結論から言うと、機上測定では、加工~測定の工程を全て設備上で行うことで、

  • ワークの取り外し作業が無くなる
  • ワークの再セッティング作業が無くなる
  • 人の移動が無くなる

など、工数削減のメリットが多くあります。
機外測定と同じ例をつかって、工数がどれだけ削減されるのか比較してみましょう。

検証2:機上測定のシミュレーション

(例)①加工 ⇒② 測定 ⇒③ 追加工⇒④測定のサイクル
機外測定のシミュレーションと比較すると、図2のように、

  • 人の移動 3回 ⇒ 0回
  • 段取作業 3回 ⇒ 0回

のように工数改善に繋がることが分かります。

機上測定での工数
▲図2:機上測定での工数

「機上測定」と「機外測定」を比較すると、削減される工数の差は歴然です。

機上測定と機外測定の工数の比較
▲図3:機上測定では移動とワークのセッティング(段取)が削減されます

機上測定の測定精度は?研削盤との相性が最適な理由。

平面研削盤が機上測定に最適な理由、それは「ワークを高精度に位置決め(チャック)した状態」で測定を行える点です。
公差がシビアなワークほど、機械・測定器への再セッティングに時間と手間がかかります。
はじめからワークを取り外さずに測定を行えば、手間を削減しながら高精度な測定が可能になります。

それでは、工数削減に寄与する機上測定がどれくらいの精度で測定を行えるのか?
たとえ工数がカットできても、精度が低く測定の役割を果たせなければ意味がないですよね。

機外測定(シリンダーゲージ)と機上測定の精度の比較を見てみましょう。

機上測定の精度を検証測定データ(参考値)

機上測定と機外測定(シリンダーゲージ)のワークの厚み計測のデータは以下のようになります。
下図のデータから、機上測定でも測定誤差1μm以下での高精度な測定ができていることが分かります。

機上測定と機外測定の精度の比較
▲機上測定と機外測定の精度の比較

機上測定では加工後のワークを測るため、加工状況やワークの材質によって「熱膨張で数ミクロン寸法が変わってしまう」という懸念の声も一部あります。

重要なのは測定結果を工数削減に活用することです。
熱膨張係数を考慮し、加工現場での追加工の基準を設けることで測定後の手戻り回数を削減するなど、効果的な測定結果の活用方法が見つかるでしょう。

機上測定が可能なCNC平面研削盤の紹介

現在、岡本工作機械製作所の平面研削盤HPGシリーズで機上計測装置「Quick Touch」としてタッチプローブが使用されています。これまで機上測定で考えられていた

  • コストが高く導入できない
  • プログラミングができないから導入できない
  • スタイラス、センサを破損するのが怖い

といった先入観を改善するオプションとして、同社では以下のように提案しています。

  • リーズナブルな導入コスト
  • 専用ソフトによりプログラミングレスで使用可能
  • 繰返し精度1μmの測定精度

【動画】機上測定のデモ

なぜ今、機上測定が重要なのか?

今の測定方法は適切ですか?市場要求と現場課題のジレンマ。

納入先、クライアントからの品質向上の要求や部品の微細化が年々シビアになる一方で、

  • 測定項目が増えたが価格に乗せられない、無償検査でやらざるを得ない…」
  • 「高価な測定器があり使わないともったいない…」
  • 検査人員の確保が難しくなってきている

と悩む現場の方も多いのではないでしょうか。当然、検査には人手(コスト)がかかります。
現状の測定ルールを見直すには、測定方法が過剰ではないか?コストに見合っているか?をまず見直す必要があります。
無理な人員による検査体制は見落としや不正発生のリスクも生み出しかねません。

納入先が求めている加工品質を「機上測定」でも満たせるかどうか?を評価・検証し適切に判断する必要があります。

市場要求からみた機上測定の必要性
▲市場要求と現場課題のジレンマ

「稼働率が落ちるから機上測定したくない!」はもう古い?

労働人口が減少していくこれからの製造現場を見据えたとき、「自部門だけの部分最適」の改善ではなく、「部門の垣根を超えた全体最適化」での改善策がより強く求められるのではないでしょうか。

これまでは加工部門は「機械の稼働率」優先で、「検査部門」は人海戦術で良かったかもしれません。

しかし 人手不足が深刻化する今、「ヒトと機械どちらに行ってもらう作業か?」は常に考えなければいけないテーマ です。
今は大丈夫でも5年後、10年後を考えた時に、今の人員や競争力を維持できるか?も考えなければいけません。

▲将来直面する課題

機上測定と三次元測定機の使い分けは?

金型や航空部品など精密加工部品において三次元測定機は高い信頼性を発揮する測定器です。
納入先からの指定など制約があるユーザも多く今後も必要なシーンは多くあるでしょう。
一方で、

  • 温度管理
  • 加工部門と測定部門との連携
  • 測定機器の操作方法の習得
  • 測定器自体はおカネを生まない

など運用・育成にかかるコストについては常に目を光らせなければいけません。

仕上げ工程レベルの精度が要求されるCNC平面研削であれば、効率的で高精度な機上測定を行えます。
測定を機械に任せれば、検査作業者の育成コスト削減や人による測定のバラつきの改善も期待できます。

当然、工作機械なので外部環境の影響は多少受けますが、安定した環境であれば問題なく使用できるでしょう。

機上測定のメリットとデメリットのまとめ

ここまでの機上測定と機外測定のメリットデメリットを整理すると、

●メリット

  • 機上測定:人の移動に関わる段取りや工数が削減される。
  • 機外測定:高い精度での測定が可能。


●デメリット

  • 機上測定:三次元測定機などと比べると測定精度は劣る
  • 機外測定:測定に伴う工数が大きく、測定システム(人・機器)の維持コストが高い。


その他メリットデメリットをまとめると以下のようになります。

機上測定のメリットデメリット

測定は加工品質を見極める重要な工程です。
一方で、測定にかかる工数の価値は、理解されづらい分野でもあります。
部門間のニーズに折り合いをつけながら製造現場全体の最適化を行う方法としての「機上測定」について、一度考えてみませんか?

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