寸法測定の自動化とは?基礎から技術選定・精度設計まで体系的に解説

寸法測定の自動化は、単に「人がノギスや三次元測定機を使う作業を機械に置き換えること」ではありません。

設計情報、公差、計測計画、センサ、解析アルゴリズム、判定ルール、工程フィードバックを一つの情報系と制御系としてつなぎ、製品の合否判定だけでなく、工程の安定化、異常の早期検知、トレーサブルな品質保証を実現する取り組みです。

近年は、オフライン検査からインライン検査やオンマシン計測へ、さらにゼロディフェクト製造を志向したリアルタイム品質制御へとシフトしており、光学計測、CT、ロボット統合、AI、データ標準化の重要性が急速に高まっています。

本稿では、個別企業の事例よりも、技術・標準・設計原理・運用原則を中心に、寸法測定自動化の全体像を体系的に整理します。

目次

寸法測定の自動化とは?概要と目的

自動車のボディインホワイト
自動車のボディインホワイト

寸法測定自動化の第一の目的は、長さ、角度、位置、姿勢、形状、表面性状などの幾何学特性を、設計仕様と対応づけて、再現可能かつ客観的に評価することです。製造システムの観点では、これは「製品定義」「計測計画」「計測実行」「解析・報告」という四つの要素から成る情報連鎖として捉えます。

寸法測定は最終検査だけの活動ではなく、設計・加工・組立・出荷・保全を貫く品質情報の中核です。

適用範囲は非常に広く、自動車のボディーインホワイトやギャップ・フラッシュ、航空宇宙の大型組立、エネルギー機器の大型部材、精密加工部品、電子・電機部品、樹脂成形品、鋳造品、医療機器、そして内部流路や格子構造を持つ積層造形部品まで含みます。

外形だけで十分な対象もあれば、複雑な自由曲面や隠れた内部形状まで確認しなければならない対象もあり、その違いが技術選定を決定づけます。とくにX線CTは内部・外部を同時に扱える点で独自の位置を占めています。また、レーザートラッカーは大型部材の製造・組立で重要な役割を担います。

環境条件も適用範囲を大きく左右します。温度管理された計測室、一般的なショップフロア、搬送中のインライン、加工熱や粉じん、振動、強い外乱光を伴う過酷環境では、使える技術も誤差が発生する要因も異なります。寸法・幾何特性の仕様と検証では標準参照温度の概念が前提になっており、実運用では温度差・温度勾配・熱変形の扱いが極めて重要です。

また、高温環境や加工点近傍では、保護筐体、耐熱材料、同期搬送、環境内での再調整が必要になることがあります。

以下の表は、設計初期の機種選定や工程構想でよく使われる「対象サイズ・必要精度・設置環境」の対応を、おおまかな目安として整理したものです。ここでのレンジは保証値ではなく、視野、被写界深度、材質、表面反射率、ラインオブサイト、治具、温度、アルゴリズム、校正状態によって大きく変わります。

区分 代表的な対象サイズ 主な候補技術 精度の目安 典型的な設置環境
微小・高精度部品 数百µm〜数十mm 顕微鏡画像処理、共焦点、干渉計、マイクロCMM、マイクロCT サブµm〜数µm級 温調環境中心
汎用精密部品 数mm〜数百mm 接触式CMM、画像測定機、構造化光、レーザー三角測量 数µm〜数十µm級 計測室〜半現場
自由曲面・板金・樹脂大物 数十cm〜数m 構造化光3Dスキャン、レーザーライン、関節アーム、ロボット搭載光学系 数十µm〜数百µm級 ショップフロア〜セル内
大型組立・治具・設備 数m〜数十m レーザートラッカ、フォトグラメトリ、トラッカ+ロボット 100µm級〜mm級 生産現場・組立エリア
内部形状を含む複雑部品 mm〜数百mm 工業用CT、必要に応じて接触/光学との組合せ 数µm〜数十µm級から用途依存 専用遮蔽設備・専用セル

主要技術と選定原理

以下の表は、主要技術を「何が得意か」「何に弱いか」「どこまで自動化しやすいか」という観点で、実務設計向けに比較したものです。

技術 強み 弱み・注意点 自動化との相性 向くユースケース
接触式CMM 高精度、幾何公差評価と親和、反射の影響が小さい 遅い、全面の形状取得に不利、柔らかい対象に不向き 精密加工部品、基準計測、マスタ計測
2D画像測定・画像処理 高速、比較的安価、小物の外形・穴位置に強い 奥行き情報が弱い、照明設計に依存 電子部品、小型打抜き部品、簡易インライン
構造化光・レーザー三角測量 高密度3D、自由曲面や板金に強い、インライン化しやすい 表面・外乱光・遮蔽の影響、視野(FOV)と精度のトレードオフ 非常に高い 板金、樹脂、鋳造、ギャップ・フラッシュ
関節アーム・ハンドヘルド3D 可搬性、現場適用、立上げ・保全に便利 姿勢依存、操作者依存、継ぎ合わせ誤差 大物の局所計測、治具確認、現地据付
レーザートラッカ・フォトグラメトリ 大作業体積、ポータブル、大型組立に適合 直視性、熱ゆらぎ、ターゲット運用が重要 航空宇宙・エネルギー・大型治具
工業用CT 内外部を同時取得、非破壊、複雑内部形状に強い 専用設備が必要、再構成条件が複雑、放射線安全が必要 中〜高 積層造形部品、鋳物、内部流路、内部欠陥と寸法の同時評価
ロボット搭載複合セル 100%検査、ハンドリング統合、工程フィードバックが容易 ロボット校正、セル幾何補償、安全設計が必須 非常に高い 中〜高スループットの自動検査セル

技術選定で本当に重要なのは、「精度が最も高い技術を選ぶ」ことではなく、「必要十分な不確かさで、必要サイクルタイム内に、必要環境で、必要な特徴を取れる技術を選ぶ」ことです。

外形だけなら光学系が最適でも、内部流路があるならCTが必要になり、数m級の組立基準点であればCMMではなくレーザートラッカやフォトグラメトリが中心になります。逆に、最終的な認証やマスタ計測には接触式CMMを残し、普段は光学インラインで監視する、というハイブリッド構成が合理的です。

三次元測定機(CMM)は反射の影響を受けにくく、精密部品の座標計測における基準技術

三次元測定機
三次元測定機

接触式の代表は三次元測定機(CMM)です。接触式CMMは今なお高精度座標計測の基準的な技術であり、離散点プロービングによる線寸法測定の受入試験・再確認試験はISO 10360-2で定められています。さらにISO/TS 15530シリーズは、CMMのメトロロジー特性とタスク固有不確かさを扱い、シミュレーションによる不確かさ評価も含んでいます。

接触式の強みは、反射・半透明・色の影響を受けにくく、寸法や幾何公差の評価ロジックと結びつけやすい点です。しかし、測定速度は一般に非接触方式より遅く、自由曲面の全面取得や柔らかい対象、微細で壊れやすい対象の測定には不向きです。

光学系は高密度の3Dデータを高速に取得でき、インライン検査との親和性が高い技術群

ハンディタイプの光学3Dスキャナー
ハンディタイプの光学3Dスキャナー

非接触式は、画像測定、構造化光、レーザー三角測量、フォーカスバリエーション、共焦点、干渉法などの種類があります。光学系は一度に高密度データを取得できるため、自由曲面、板金、樹脂、鋳肌、面形状、ギャップ・フラッシュの評価に強く、インライン化との親和性が高いです。

ISO 10360-7はイメージングプロービングシステムを備えたCMMの試験に対応し、構造化光3Dスキャナについては、VDI/VDE 2634系列が広く参照されており、その感度や限界についても詳細な検証が行われています。光学系は速度と情報密度で優れる一方、表面反射、散乱、透明・半透明、遮蔽、被写界深度、環境光の影響を受けやすく、校正と照明設計の度合いが結果を大きく左右します。

ポータブル計測は現場適用に優れるが、精度は姿勢・操作者・継ぎ合わせ条件に依存

関節アーム型三次元測定機
関節アーム型三次元測定機

ハンドヘルドスキャナや関節アーム型CMMは、現場近傍での可搬性と柔軟性が魅力です。ISO 10360-12は、関節アームCMMの受入試験・再確認試験を規定しており、接触プローブだけでなくオプションとして光学距離センサも含みます。

ポータブル機は、治具から外しにくい部品や大型ワーク、立ち上げ時の工程確認、修理・保全、現地据付に向いていますが、幾何学的安定性や操作者依存性、アーム姿勢依存の誤差、視野の継ぎ合わせが精度に影響するため、「誰でも同じ精度が出る」というわけではありません。3Dスキャナの静的姿勢評価にはASTM E2919-22が使われています。

レーザートラッカは数m〜数十m規模の大型部材の組立における中核計測技術

レーザートラッカー
レーザートラッカー

大型部材・大型組立においては、レーザートラッカーが主流となります。レーザートラッカは大型部材の製造・組立における代表的な計測手段であり、近年は絶対距離計(ADM)の高精度化やハンドヘルドプローブ、ラインスキャナなどのアクセサリによって適用範囲が拡大しています。

ISO 10360-10:2021とASME B89.4.19-2021では、レーザートラッカーの中間試験が強化され、現場での健全性確認がしやすくなりました。大型構造物では、フォトグラメトリやトラッカとの複合利用も一般的で、広い作業体積とポータビリティの代わりに、視線確保、ターゲット配置、熱ゆらぎ、床振動、ロボットとの相対運動管理が重要になります。

工業用CTは内外部を同時に非破壊で計測できる技術であり、複雑形状部品の品質保証に有効

工業用CT
工業用CT

工業用CTは、内部形状と外部形状を同時に捉えられるため、従来の外部計測だけでは難しかった部品に対して有効な装置です。ISO 15708-2は工業用CTの原理、装置、試料・材料・幾何条件を扱い、ISO 15708-4は用途別の性能資格付けを扱います。CTは材料評価、欠陥解析、寸法検査に加え、複雑部品や積層造形品の品質保証においても重要性が高まっています。

ただし、ビームハードニング、散乱、リングアーチファクト、焦点ぼけ、ステージ誤差、検出器幾何誤差、ボクセルサイズのスケール誤差など、誤差源は多く、トレーサビリティと不確かさ評価は依然として研究・標準化の主要テーマです。

画像処理とAIが計測の高度化を支え、ロボット搭載構成には外部基準による幾何補正が不可欠

画像処理とAIの活用で計測の高度化を図る
画像処理とAIの活用で計測の高度化を図る

画像処理は、2D計測でも3D計測でも、エッジ検出、ストライプ抽出、サブピクセル推定、位相解析、セグメンテーション、レジストレーション、特徴抽出の中核です。近年は深層学習が、光学メトロロジー全般、構造化光の位相回復、工業用CTの再構成・セグメンテーション・特徴抽出に活用されつつあります。

構造化光では機械学習による位相回復で位相シフトを減らしリアルタイム化を狙う研究があり、工業用CTへのAI適用においても、不確かさ定量化と説明可能性が受容の前提として重要視されています。

自動化セルでは、ロボットにセンサを載せて「測りに行く」構成が増えていますが、ロボットの絶対精度不足を補うには、外部基準、セル校正、動的補正、あるいはレーザートラッカ・ビジョンとの統合が必要になります。さらに、センサフュージョンは、複数センサより正確で信頼できる全体情報を得るために使われ、前処理、登録、最適化、融合、データ削減、メッシングへと進む多段の処理系を持ちます。

精度と不確かさ

「精度」と「不確かさ」を分けて捉える

寸法測定の自動化を理解するうえで、まず「精度」と「不確かさ」を分けて考える必要があります。測定不確かさとは、測定結果に関連して被測定量に合理的に帰し得る値のばらつきを特徴づけるパラメータです。

校正・規格・組織能力でトレーサビリティを担保する

VIM(国際計量基本用語集)では、「校正」とは標準が与える値と測定系の指示値の関係を確立し、その関係を用いて測定結果を得る行為であり、調整や単なる確認とは区別されます。トレーサビリティは、切れ目なく文書化された校正の連鎖を通じて結果を基準へ結びつける性質であり、校正階層と測定不確かさを伴います。

なお、トレーサビリティがあること自体は、その不確かさが用途に十分であることを保証しません。

この考え方を実務へ落とし込む規格群として、ISO 14253-1は、測定不確かさを考慮して仕様への適合・不適合をどう判断するかというデシジョンルールを与えます。装置性能の確認には、接触式CMMのISO 10360-2、イメージングCMMのISO 10360-7、関節アームCMMのISO 10360-12などがあり、受入試験と再確認試験を通じて、メーカー値と現場実力の乖離を監視できます。

これに対してISO 10012は測定マネジメントシステムの要求事項を、ISO/IEC 17025は試験・校正ラボの能力・公平性・一貫運用の要求事項を定めています。装置精度、判定ルール、組織能力、記録管理は別々の論点であり、それぞれを外してはなりません。

タスク固有不確かさの考え方も重要です。ISO/TS 15530-1はCMMのタスク固有不確かさの源を整理し、ISO/TS 15530-4はシミュレーションによる評価を扱っています。ここでいう不確かさは、装置そのものの幾何誤差だけではなく、環境、測定戦略、スタイラスやプローブ、ワークの形状偏差、表面粗さ、解析アルゴリズムまで含めたものです。

CMMの主要誤差源としては、プローブ誤差、幾何誤差、熱変形、機械動特性、部品との相互作用、アルゴリズム誤差、サンプリング戦略が挙げられます。したがって、不確かさを「メーカーのカタログ値」で代表させるのは不十分で、計測タスクごとの評価が必要です。

以下の表は、技術別に「どこで精度が崩れやすいか」と「何で校正・確認すべきか」を整理したものです。装置導入時よりも、定常運用でこの表を回せるかどうかが鍵となります。

領域 主要誤差源 推奨される校正・確認 代表的な参照規格・考え方
接触式CMM 幾何誤差、プローブ誤差、熱変形、サンプリング戦略、フィッティング 長さ標準、球・リング・ゲージブロック、定期的な受入/再確認、タスク固有不確かさ評価 ISO 10360-2、ISO/TS 15530、ISO 14253-1
画像・構造化光・レーザーライン カメラ/投影器校正、照明、表面反射、視野依存、遮蔽、移動体同期 カメラ校正体、点間長さ標準、格子/球列アーティファクト、VDI/VDE系評価 ISO 10360-7、VDI/VDE 2634、ASTM E2919
関節アーム・ポータブル 姿勢依存、関節誤差、操作者差、継ぎ合わせ誤差 校正長さ標準、ボールバー/球列、再確認試験 ISO 10360-12
レーザートラッカ 距離計・角度計誤差、熱ゆらぎ、視線、ターゲット設置、動的誤差 長尺標準、中間試験、ネットワーク法、現場健全性確認 ISO 10360-10、ASME B89.4.19
CT ボクセルスケール、ビームハードニング、散乱、リング、ステージ/検出器幾何、表面決定アルゴリズム スケールアーティファクト、幾何校正、用途別資格付け、インターラボ比較 ISO 15708、ASME B89.4.23、タスク固有不確かさ評価
解析ソフトウェア フィッティング定義、近似、丸め誤差、実装バグ、登録戦略 参照データセットとの比較、既知解との照合、ソフトウェア妥当性確認 GUM/VIMの測定モデル、参照フィットによるソフト評価

現場で精度が崩れる要因 ― 環境・点群処理・CT

特に環境影響は過小評価されがちで、CMMの大きな誤差源として熱条件による構造変形があり、実際には規定温度範囲外で使われることも少なくありません。光学系では、外乱光、表面反射、遮蔽、移動体計測が課題であり、過酷環境では耐熱設計や保護筐体が必要です。

点群処理では、ラインオブサイトセンサに特有の自己遮蔽により、反復最近傍点法(ICP)でCAD合わせ込みをすると初期姿勢がほぼ正しくても系統的なずれが生じることがあります。CTではさらに、検出器幾何誤差、ステージ誤差、散乱、アーチファクト、再構成パラメータが寸法結果に影響します。

データ処理・ソフトウェア・統計管理

自動化にはソフトウェアの設計が重要になる
自動化にはソフトウェアの設計が重要になる

寸法測定の自動化では、センサそのものよりも、データ処理系の設計が成果を左右する場面が少なくありません。

製造用の寸法メトロロジーでは、製品定義、測定プロセス計画、測定プロセス実行、解析・品質データ報告という四つの要素が相互接続される必要があります。品質情報フレームワーク(QIF)は、設計から計画、実行、解析までをまたいで品質情報を交換する統合的な情報モデルです。自動化の本質は「センサの自動化」ではなく「情報の自動化」にあります。

実務のデータフローは、おおむね次のように表せます。

  1. CAD/モデルベース定義(MBD)・公差定義
  2. 計測計画
  3. センサ校正
  4. データ取得
  5. 前処理
  6. 点群/ボクセル生成
  7. レジストレーション
  8. フィッティング/幾何公差(GD&T)評価
  9. SPC・判定
  10. MES/QMS/工程制御へのフィードバック

この一連の流れを標準データでつなげると、測定プログラム再利用、判定ロジックの共通化、工場間展開、監査対応が容易になります。逆に各工程で独自フォーマットを使うと、再現性と追跡性が急激に落ちます。

点群・画像・ボクセルを扱う自動計測では、前処理、登録、最適化、融合、データ削減、メッシングが基本処理です。この一連の処理は、センサフュージョンの技術として体系化されています。ラインオブサイトセンサの点群では自己遮蔽により反復最近傍点法(ICP)ベースのCAD合わせ込みが系統的にずれる可能性があります。

したがって、点群からCAD差分を出す工程では、単に「自動位置合わせ」を実行するのではなく、初期位置、特徴ベース合わせ、拘束条件、死角分布、測定不確かさを考慮したロバストな登録戦略が必要です。

フィッティングも同様に、真円度・直径・平面度・位置度などは、どの数学モデルで求めるかによって結果が変わります。同じ円形特徴でも最小外接径、最大内接径、最小領域径、最小二乗径、二点径などで結果が異なり、部品の機能と整合しないアルゴリズムを選ぶと、計算上は適合でも機能上は適合しない可能性があります。

フィッティングソフトウェアの妥当性確認は、代表的な試験データと参照フィット結果との比較で行います。「何を最適化しているのか」を理解していない自動計測では計測の意味がありません。

統計的工程管理(SPC)は、寸法測定自動化の価値を「検査」から「工程制御」へ拡張する中核です。測定データはその場の合否判断だけで終わらせず、工程安定性の監視に活用してこそ、大きな経済効果を生みます。管理図は変数管理図、属性管理図、多変量管理図に分かれ、管理限界は仕様限界とは違い「工程が統計的管理状態にあるか」を見るためのものです。

個々値管理図では移動範囲を用いて変動を扱い、Shewhart管理図では平均的には約371点に1回の誤警報が起きる一方、WECOルールを追加すると感度は上がるものの誤警報頻度も高くなります。自動測定系では、センサノイズや再構成揺らぎを工程異常と誤認しないよう、測定不確かさとSPC設計を一体化して考える必要があります。

導入メリットと経済性

寸法測定自動化の最大のメリットは、単位時間あたりの測定件数を増やすことよりも、「異常発見を前倒しし、正常な工程に戻せること」にあります。オフライン専用測定からインライン自動検査へ移行することで、検査時間の短縮、連続的な品質監視、より短いサイクルタイム、完全自動セル化が可能になります。これは、最終不良の低減だけでなく、工程ドリフトの早期検出、条件補正、段取り替え短縮、立上げ期間短縮にもつながります。

ただし課題も同じくらい大きくなります。

  1. 初期投資が高く、しかもその多くはセンサ本体ではなく、治具、搬送、遮蔽、ロボット安全、ソフトウェア統合、校正アーティファクト、データ基盤、人材教育にかかります。
  2. 運用フェーズでは、定期校正、リファレンスチェック、レンズ清掃、X線源・検出器の保守、ロボット再校正、ソフトウェア更新、AIモデルのドリフト対策が必要です。
  3. 自動化すると誤警報や過剰反応のコストが表面化しやすくなり、SPCルールや閾値設計が甘いと、現場が「アラーム疲れ」を起こします。
  4. AIを使う場合は、説明可能性と不確かさの定量化が不足すると、規制産業や監査下では採用が進みにくいです。

経済性評価では、ROIを単純な「検査員削減効果」で計算すると失敗しやすくなります。品質コストモデルには、検査コスト、修理コスト、スクラップコスト、次工程への不良流出コスト、誤判定、SPCの検出能力、工程能力、検査能力を含めて考えるべきです。さらに近年の投資評価モデルは、インライン/インプロセス非破壊検査によって、材料消費やエネルギー使用を減らし、再加工や破壊試験を減らす効果まで含めています。

そのため、寸法測定自動化の便益は、①スクラップ・リワーク削減、②流出不良防止、③工程立上げ短縮、④サンプルから100%監視への移行による品質損失低減、⑤保全・校正を含む予防的運用、⑥材料・エネルギー削減、の合算で見るべきです。

実務では、次のように考えると整理しやすくなります。

ROI ≈(年間の品質損失削減額+省人化効果+スループット改善額+外部不具合回避額+立上げ短縮効果−年間運用費)÷ 初期投資

年間運用費には、保守契約、校正、消耗品、再認定、ソフト保守、データ保管、教育訓練、停止リスクを入れるべきです。投資評価は便益の洗い出しと代替案の比較を分けて行うのが適切で、測定自動化は単体導入ではなく、工程改善投資の一種として評価するのが本筋です。

スケーリングの観点では、1ラインでしか使えない専用セルは、見かけの精度が高くても投資対効果が伸びにくいです。反対に、標準化されたデータモデル、共通の測定プログラム資産、再利用可能な判定ロジック、複数工場で共有できるAIモデルや工程ダッシュボードを持つ構成は、工場横断で便益を増幅できます。エッジ計算は大容量データの転送時間を減らし即時フィードバックを可能にし、クラウドはモデル学習・横断分析・比較ベンチマークに向いています。

単一装置のROIよりも、「データ再利用のROI」を見たほうが、近年の自動計測投資は実態に近い評価になります。

業界別の導入事例

自動車:インライン計測とSPCで工程内補正を行う

自動車では、ボディーインホワイトの位置決め、穴位置、フランジ形状、ギャップ・フラッシュ、組立偏差の監視が代表例です。レーザー系インライン計測や多線レーザー+カメラにより、車体組立環境で高速にギャップ・フラッシュを測定する構成が普及しており、オフラインの接触式CMMと役割分担しながら工程内での早期補正を行うアプローチが一般的です。100%自動計測とSPC・設備条件フィードバックの結合が鍵になります。

航空宇宙・エネルギー・大型構造物:レーザートラッカで座標系を組立に返す

航空宇宙、風力、エネルギー機器などの大型分野では、数m級以上の組立・据付・治具確認が中心になり、レーザートラッカやフォトグラメトリが主役です。大型自由曲面や複合材では、全面形状の把握と基準系の整合が重要で、局所の高精度確認には接触式や高密度光学系を併用します。

大型分野では、測ることそのものより、取得した座標系を組立・加工・修正にどう返すかが本質であり、位置合わせ、デジタルアセンブリ、現場合わせの削減が便益の中心です。

精密加工・電子部品:画像・CMM・3Dスキャンの役割分担

精密加工、電子部品、小型機械部品では、2D画像測定機、構造化光、レーザー三角測量、接触式CMMの組み合わせが一般的です。高速判定は画像系、基準寸法の担保はCMM、自由曲面や変形の可視化は3Dスキャンという役割分担が合理的で、寸法そのものに加え、穴位置、ピッチ、平面度、面のうねり、反り、組立時の干渉量をデータ化し、工程能力と結びつけることで、測定自動化が初めて利益を生みます。

積層造形・複雑内部形状部品:CTとインプロセス計測の活用

積層造形や複雑内部流路を持つ部品では、CTの活用が有効です。内部欠陥、未溶融、閉塞、内部チャネル寸法、外形偏差を一つのデータで扱えるため、後工程でしか見えなかった問題を前工程で確認できます。

さらに、オンマシン・インプロセス計測の技術は、粉末床溶融や高付加価値部品で、層ごとの異常検出や、工程中の救済・廃却判断を可能にする方向へ進んでいます。積層造形では、外形の最終確認だけでなく、プロセス監視データと完成品寸法を結びつけることが今後の課題です。

寸法測定の自動化と精度向上を実現するメトロールのタッチプローブ

寸法測定の自動化を進めるうえで見落とされがちなのが、最後の精度を担保する接触測定の重要性です。光学式や画像処理による高速測定が進む一方で、基準面や穴位置、幾何公差などの最終確認には、依然として高い信頼性を持つ接触式センサが欠かせません。

こうした用途において注目されているのが、メトロールのタッチプローブです。メトロールのタッチプローブは、μmレベルの繰り返し精度と高い耐環境性を両立しており、加工機内や自動化ラインに組み込んだインライン測定にも対応できます。

製品ページはこちら:https://www.metrol.co.jp/touch-probe/

メトロールの位置決めセンサの製品ラインナップ

高精度位置決めタッチスイッチ(位置決めセンサ)

高精度位置決めタッチスイッチ(位置決めセンサ)

接触式の高精度スイッチで、工作機械やロボット、治具などの位置決めやワーク有無検出に用いられます。最大繰返し精度0.5µmと極めて高精度で、IP67の防水防塵性能を備え、悪環境下でも安定動作します​。200種類以上の標準モデルがあり、狭所対応、高温対応、真空対応、低接触力タイプなどバリエーションが豊富です​。

ツールセッタ(工具長測定センサ)

ツールセッタ(工具長測定センサ)

CNC工作機械や産業用ロボットに搭載し、工具長の測定や原点位置出し、工具折損検知などに使用される接触式センサです​。工具の長さや摩耗、熱変位を機内で自動測定・補正することで加工不良を防止し、段取り時間を大幅短縮します​。世界74ヵ国で50万台以上の出荷実績があるメトロールのベストセラー製品です​。

タッチプローブ(機上測定プローブ)

タッチプローブ(機上測定プローブ)

工作機械やロボットに搭載し、加工前のワーク位置決め(芯出し)や加工後の寸法測定を自動で行う機内計測用の接触式プローブです​。繰返し精度1µmでワークの基準出し・寸法検査を自動化し、熟練者の手作業を置き換えることで段取り時間短縮や加工不良防止に貢献します​。有線式と無線式(ワイヤレス)のモデルがあり、5軸加工機やロボットへの後付けニーズにも応えています​。

エアマイクロセンサ(空圧式センサ)

エアマイクロセンサ(空圧式センサ)

空気圧を利用した非接触センサで、ワークの着座状態を数ミクロン精度で検出できます​。従来は困難だった10µm以下の隙間(「浮き」)を±0.5µmの繰返し精度で検知し、ワークと治具の密着不良による加工不良や設備のダウンタイムの発生を防止します​。半導体製造プロセスや精密部品のクランプ工程、研削盤の砥石位置合わせなどで活用され、国際標準のIO-Link通信にも対応したスマートセンサです​。

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