ロボットティーチングとは?仕組み・方法・実務の全体像を解説

操作パネルにてロボットに指令を出す
操作パネルにてロボットに指令を出す

本記事では、産業用ロボットのティーチングについて、操作手順の解説に加え、導入・立ち上げ・量産運用・改善・教育までを含めた「実務全体の工程」を解説します。

ロボットティーチングはしばしば「点を教える作業」として捉えられがちですが、実際の現場では、座標系の設定、軌道設計、速度条件、センサ補正、安全対策などが複雑に絡み合い、これらの要因が工程品質や生産性、さらには保守性や再利用性にまで影響を及ぼします。

また、近年は少量多品種化や短納期化が進む中、従来の手動ティーチングだけでなく、オフラインプログラミングやセンサ統合を前提とした設計からのアプローチが求められるようになっています。その結果、「なぜ現場でズレるのか」「なぜ再教示に時間がかかるのか」「どうすれば安定して再現できるのか」といった課題に直面するケースが少なくありません。

本記事では、こうした現場で実際に起きる問題やその背景を踏まえながら、ロボットティーチングを体系的に理解できる内容になっています。

目次

ロボットティーチングとは?量産品質を再現するための設計工程

ロボットの操作方法の指導
ロボットの操作方法の指導

産業用ロボットのティーチングは、単にロボットに「点を覚えさせる」作業ではありません。実務では、ツールの幾何情報、ワークや治具の座標系、動作点、軌道、速度・加速度、I/O、センサ補正、安全条件を整え、量産時に同じ品質とタクトで再現できる状態へ仕上げる一連の工程を指します。

米国の安全衛生ガイダンスでは産業用ロボットを、可変プログラム運動で多様な作業を行う再プログラム可能な機械マニピュレータと定義しており、日本のロボット研究の解説でも、教示は「繰り返し行う動作を生成するため」に人がロボットへ作業指令を与える行為として位置づけられています。

日本の法令実務では、「教示等」はさらに重い意味を持ちます。厚生労働省が所管する労働安全衛生規則では、産業用ロボットの可動範囲内で行う教示等や検査等が規律対象となっており、可動範囲内で作業する人に対して安全措置と特別教育が求められます。

したがって現場でのティーチングは、プログラミングの一部であると同時に、安全管理・品質保証・保全も兼ねた複合的な作業となります。

ティーチングの目的は、次の5つに分けると実際の現場でも理解しやすくなります。

  1. 狙った位置・姿勢へ到達させること
  2. 必要な速度・加速度・補間方式で工程品質を確保すること
  3. ばらつきのあるワークや治具、工具摩耗、熱変位に対して補正可能な構造にすること
  4. 異常停止および再起動の手順を含め、安全な運用ができること
  5. 後から人が再利用・改造しやすいプログラムとデータ構造にしておくこと

ティーチングには「座標を合わせれば終わり」だけでなく、再教示のしやすさと変更しやすい柔軟性、トラブルに対する耐性まで含めた設計が、現場のオペレーターに求められます。

  1. 要求仕様整理:品質・タクト・対象ワーク
  2. 安全条件整理:リスクアセスメント
  3. ツール/TCP・ワーク座標登録
  4. 動作点・軌道・I/O設計
  5. シミュレーション/実機確認
  6. センサ校正・微修正
  7. 量産条件での検証
  8. 標準化・バックアップ・引継ぎ

上記の流れのうち、「どこまでをPC」で済ませ、どこから「実機で調整する」かを決めておくことが重要になります。ここを曖昧にすると、立ち上げ後に「なぜか現場だけずれる」「再起動時に安全停止が頻発する」「別品種展開のたびに最初からやり直しになる」といったよくある問題が起きます。

※TCPとは、Tool Center Point(ツールセンターポイント)の略で、ロボットの先端工具における「基準となる点」のことを指します。

ティーチングの方式の分類と選び方

手動ティーチングは実機固有のばらつきをその場で補正できる

個々の機器の性質や仕様に合わせた調整が可能
個々の機器の性質や仕様に合わせた調整が可能

手動ティーチングは、ティーチペンダント(ティーチングを行うための操作盤・入力装置)などを使用し、実機を直接動かしながら位置・姿勢・条件を教える方法です。最も古典的で、いまでも広く使われています。

手動ティーチングは実機の剛性、治具誤差、ケーブル干渉、工具のたわみ、ワーク個体差を、その場で目視確認しながら調整できるからです。特に、狭い隙間への挿入、ワークの微妙な逃げなどの「現場のクセ」が大きい工程では、オフラインよりも高い効果が得られます。

ただし、手動ティーチングは「生産停止時間」が発生しやすく、作業品質も担当者の熟練度に左右されます。現代の手動ティーチングは一枚岩ではなく、次の3系統に分けて考えると整理しやすいです。

  1. 従来型のティーチペンダント教示
  2. 協働ロボットや簡易教示向けの手引き教示
  3. ブロックやテンプレートで点列だけを教える簡易GUI教示

オフラインプログラミングは現場停止なしに検証を進められる

リアルタイムでの動作の検証が可能
リアルタイムでの動作の検証が可能

オフラインプログラミングは、3D CADや仮想コントローラを使ってPC上でロボットセルを構築し、干渉・到達性・サイクルタイム・工程シーケンスを事前に検証する方法です。実機を止めずにプログラミングできるため、量産ラインの停止による損失を抑えやすく、多品種化やセル再配置にも効果的です。

しかし、オフラインプログラミングは万能ではありません。CADモデルが正確でも、現実のロボットには絶対位置精度の限界、治具誤差、工具取付誤差、センサ取付誤差、ケーブルやホースによる拘束、熱変位があるため、必ずしも実機補正が不要になるとは限りません。

大半の実工場ではハイブリッド方式が最適解になりやすい

オンラインとオフラインの利点を複合的に活用する
オンラインとオフラインの利点を複合的に活用する

実務上もっとも汎用性が高いのは、オンラインとオフラインの中間を採用したハイブリッド方式です。よくある例としては、PC上でセル構造と大まかな軌道を作り、実機ではTCP、ワーク座標、センサ座標、安全領域、接近・退避点だけを短時間で詰めるという方法です。

学術研究でも、CADベース、ビジョンベース、CADとビジョンの相互補完を組み合わせるハイブリッド手法が提案されており、AR/VRを用いた直接教示や、ユーザーフレーム・相対ジョブ・自動TCP補正を併用する方向は、現場の実装路線ともよく一致しています。

試作・単品・不定形工程は手動寄り、量産・多品種・設備変更の多い工程はオフラインプログラミング寄り、そして大半の実工場ではハイブリッド方式が最適解になりやすいです。特に、治具付き組立、ピックアンドプレース、溶接、塗布、バリ取りのように「形状情報はあるが、現場誤差も無視できない」工程は、ハイブリッドを前提に設計したほうが、導入後の保守まで含めた総工数が下がる傾向にあります。

主要メーカーのティーチングツールと代表的なワークフロー

主要メーカーの教示環境は、見た目は違っても、現場教示UI、言語/テンプレート、オフラインプログラミング/仮想化、安全・センサ・補正オプションの四層で整理すると理解しやすくなります。下表は、各社の公開情報から実務上の違いをまとめたものです。

メーカー 現場教示の中心 オフラインプログラミング / 仮想化 実務上の特徴
FANUC iPendant / Tablet TP / HandlingTool ROBOGUIDE 量産セルの標準化に強く、DCS・iRVision・iRCalibrationとの連携が実務で組みやすい
ABB FlexPendant / RAPID / Wizard RobotStudio / Virtual Controller 仮想コントローラ前提の精密なオフラインプログラミングが強みで、初心者向けのノンコード系も持つ
安川電機 標準ペンダント / スマートペンダント / INFORM MotoSim EG-VRC ユーザーフレーム、相対ジョブ、MotoSight2D、MotoFitなど現場補正しやすい道具立てが豊富
KUKA KRL系教示 / 設定画面 / pendant KUKA.Sim / KUKA.OfficeLite / KUKA.WorkVisual セル全体の工学設計、仮想制御、補正・安全監視の構成力が高い
川崎重工業 Teach Pendant / AS Language K-ROSET / neoROSET AS言語が標準搭載で、オフラインプログラミングと自動教示支援を組み合わせやすい
デンソー Teach Pendant / PacScript WINCAPSⅢ 小型〜中型セルで、シミュレーション機能と3Dビューティーチングを往復しやすい
Universal Robots PolyScope / Freedrive / URScript URSim 初学者が入りやすく、TCP・ペイロード・力をウィザードで扱いやすい
オムロン ACE / pendant / 統合制御 ACE / ロボット統合コントローラー ロボット・制御・ビジョン・供給機を一体で組み立てる思想が強い

注記:表の整理は各社の公式製品ページ・マニュアル索引・トレーニング情報に基づきます

FANUCでは、現場で iPendant や Tablet TP を使って UTool/UFrame、点列、I/O 条件を教示し、PC側では ROBOGUIDE でセル確認と事前検証を行い、必要に応じて HandlingTool、iRVision、Force Sensor、DCS、iRCalibration を足して仕上げるのが代表的な構成です。この構成なら、現場補正と標準化のバランスが良く、量産設備で「段階的に機能を足す」ような運用のやり方に向いています。

ABBは、RobotStudio と Virtual Controller を核にした オフラインプログラミング が非常に強いメーカーです。仮想環境で実機と同じ制御ソフトを使って検証できるため、開発段階での再現性を高めやすいことに加え、現場での FlexPendant と RAPID による細かな調整も可能です。さらに、初心者向けには Wizard Easy Programming を用意しており、同一メーカー内で「ノンコード簡易教示」から「本格的なRAPID/仮想コントローラ」まで連続的に学習・運用しやすい構造になっています。

安川電機は、ティーチングペンダント「スマートペンダント」とロボット言語「INFORM」を筆頭に、ユーザーフレーム、相対ジョブ、MotoSim EG、MotoSight2D、MotoFit など「現場でずれたものをどう短時間で戻すか」に強いツールが揃っています。特に 相対ジョブ や ユーザーフレーム の活用は、多品種展開、セル移設、TCP再補正後の再利用で大きな効果を出しやすく、保全と教示をまたぐ実務では非常に重要です。

KUKAは、KUKA.Sim、KUKA.OfficeLite、KUKA.WorkVisual、KUKA.SafeOperation、KUKA.ForceTorqueControl、KUKA.TRACC TCP など、ロボット単体ではなく「セル全体のデジタル工学環境」を構成する発想が強みです。セル設計、仮想制御、I/O や機械ユニットの統合、補正・安全監視まで一気通貫で扱いたい案件では有力な選択肢です。しかし、学習初期には概念が多く感じやすいため、KUKA College など体系訓練との相性が良いメーカーでもあります。

川崎重工業、デンソー、Universal Robots、オムロンも、それぞれ明確な個性があります。川崎重工業は AS言語 を標準搭載し、K-ROSET / neoROSET で オフラインプログラミング を進めやすいです。デンソーは WINCAPSⅢ のシミュレーション機能と3Dビューティーチングの往復がしやすく、小型〜中型セルの実践教育にも向きます。Universal Robots は PolyScope と Freedrive、TCP・ペイロード ウィザードによって初学者が入りやすく、オムロンは ACE を軸にロボット・ビジョン・供給機・制御をまとめて扱いやすい構造です。

座標系・軌道・補正

座標系の誤りがすべての教示点のずれを引き起こす

座標指令ミスによる衝突事故
座標指令ミスによる衝突事故

座標指令ミスによる衝突事故

ティーチングの失敗の多くは、実はプログラム文法より座標系の誤りから起きます。少なくとも、ベース座標、ユーザー/ワーク座標、ツール座標、TCP、必要ならセンサ座標の関係を頭の中で明確に持つ必要があります。

TCPの定義がずれると、すべての教示点が連鎖的にずれます。実務では、CAD値手入力、3点/4点/5点法、姿勢教示、カメラ・センサによる自動補正が併用されます。

ここから分かるのは、「TCPは一度登録したら終わり」ではなく、摩耗、衝突、ツール交換後には必ず再検証すべき運用データだということです。

補間方式と関節姿勢の選択が点間の安全性を決める

ロボットアームの方式により座標移動時の補間方式が違う
ロボットアームの方式により座標移動時の補間方式が違う

軌道補間は、教示点の間をロボットがどう結ぶかを決める重要要素です。一般に、Joint系補間は最短・高速になりやすいが、TCPの軌跡は必ずしも直線とは限りません。Linear系はTCPを直線移動させやすく、塗布・溶接・挿入・面追従に向いています。Circular系は円弧を扱いやすく、メーカーによっては MoveP や blending、CP/PTP など独自拡張もあります。

逆運動学は、要するに「このTCP姿勢を、どの関節角の組み合わせで実現するか」を解く問題です。6軸ロボットでは同じ先端姿勢に複数の姿勢解が存在し、肘の向き、手首反転、軸限界の近さで挙動が大きく変わります。

実務で怖いのは、点Aと点Bは通るのに、その間で特異点に近づき急減速や姿勢反転が起きるケースです。点単位で教示するだけではなく、「点間の姿勢遷移」と「関節空間の余裕」を同時に見る必要があります。

速度設定は工程の失敗モードに合わせて設計する必要がある

悪い環境や条件でも対応できる設計が重要
悪い環境や条件でも対応できる設計が重要

速度設定は単に「速い/遅い」ではありません。実機では、加速度、減速度、ブレンド半径、姿勢変化、ペイロード、重心位置が相互に絡みます。つまり、経路だけでなく荷重条件まで正しく入れないと、シミュレーション時間も実機挙動も信用できません。

実務的な指針としては、接近・退避・空走・加工/接触・異常復帰で速度帯を分けるのが有効です。加工点付近だけを遅くし、それ以外を速くするのが基本的な構成ですが、角部や姿勢変化の大きい区間では、加速度とブレンドが品質に強く効きます。

塗布ではビード幅、研磨では押付け、挿入では面取り追従、視覚ピックでは停止時の残留振動が問題になるため、工程の失敗モードに合わせて速度・加速度を設計すべきです。

絶対位置精度の限界が現場補正を不可欠にする

ロボットアームの原点確認
ロボットアームの原点確認

オフラインプログラミングが現場でずれる最大要因の一つは、ロボットの絶対位置精度が、繰り返し精度ほど高くないことです。現場目線で言うと、「同じ誤差を繰り返すロボット」は補正しやすいが、「基準がずれたまま正確に繰り返すロボット」はそのままだと量産不良を安定して出してしまう、ということです。

そのため、導入時には少なくとも、ロボット原点/マスタリング確認、ツール校正、ワーク座標校正、必要ならビジョン-ロボット関係校正、さらに荷重・重心・安全領域の再確認が必要です。「補正のための機器や基準点」をどこに置くかを設計の段階で決めておくと、再立上げが圧倒的に楽になります。

センサ統合と適応制御

センサ統合の本質は、教示だけでは吸収しきれない不確実性を、運転中に埋めることです。大きく分けると、位置の不確実性を埋めるのがビジョン、接触やばらつきを吸収するのが力覚、接近や侵入を監視するのが近接・安全センサです。

ここで重要なのは、工程用センサと安全用センサを混同・共用しないことです。2D/3Dビジョンや力覚は主に工程品質を上げるための手段ですが、光電保護装置やレーザースキャナは人の保護や安全のために使います。

センサ種別 主な用途 教示時に押さえる要点 起きやすい不具合 有効な対策
ビジョン(2D/3D) ワーク位置検出、ピッキング、検査、コンベヤ追従 カメラ校正、ロボット座標との対応付け、照明安定化 ミスピック、位置飛び、条件替えで再現しない 校正治具の標準化、照明固定、座標変換のログ化
力覚/6軸力トルクセンサ 挿入、研磨、バリ取り、圧入、接触追従 センサフレーム、ゼロ点、押付け軸、しきい値設計 ビビり、過大押付け、暴走、ドリフト 暖機後ゼロ、低速接近、軸選定、逃げ動作の定義
近接/光電/レーザ 存在確認、接近監視、安全侵入検知 停止距離と配置、safe I/O、無効化条件の厳格化 誤停止、死角、危険なすり抜け 標準に基づく配置、検証記録、ミューティング条件管理

表の内容は、FANUC iRVision、ABB Integrated Vision、KUKA.VisionTech、Yaskawa MotoSight、FANUC/ABB/KUKA/Yaskawaの力覚系資料、およびJIS B 9704系の公開情報を基に整理しています。

ビジョン統合では、カメラの性能よりも、校正手順と照明・背景・姿勢変動への設計のほうが重要です。ビジョンは「画像認識アルゴリズム」だけではなく、ロボット座標系への変換を含む工学的統合作業になります。

力覚統合では、センサが見ている軸と、ロボットが逃がすべき軸を混同しないことが肝要です。ここでは「どの基準座標で力を測るか」「ゼロ点をいつ取るか」「接近速度をどう抑えるか」「異常値のときは、どう離脱するか」を決めないと、せっかくの力制御が不安定化を招く要因になります。

安全対策と規格法令

作業者の安全を優先した安全対策が重要
作業者の安全を優先した安全対策が重要

安全を後回しに考えると、ティーチングは必ず破綻します。機械安全の基本は、危険源の同定、リスク見積り、リスク評価、そしてリスク低減です。ISO 12100 とその国内対応規格 JIS B 9700 は、この考え方を機械安全の基本方法論として位置付けています。

ロボット安全規格 JIS B 8433-1/-2 はタイプC規格としてロボット特有の危険源を扱うため、ロボットセルではまず対象工程の危険源を洗い出し、そのうえでタイプA/B/C規格を組み合わせるのが正攻法です。

実務で最低限おさえたい主要規格・法令は、次のように整理できます。

  • 国際ロボット安全の中核

ISO 10218-1:2025(ロボット本体)と ISO 10218-2:2025(ロボットシステム/インテグレーション)です。ISOの公開ページ上では、2025年版が現行版です。

  • 協働ロボットの補足

ISO/TS 15066:2016 は、協働運転に関する補足文書です。米国側では TR 606(RIA TR R15.706-2019) が ISO/TS 15066 の国家採用文書です。

  • リスクアセスメントと安全関連制御

ISO 12100:2010、ISO 13849-1:2023、IEC 62061:2021、IEC 60204-1:2016+A1:2021 が土台です。

  • 日本の対応JIS

JIS B 8433-1:2015 / -2:2015(ISO 10218:2011と一致)、JIS B 9700:2013(ISO 12100)、JIS B 9705-1:2019(ISO 13849-1:2015)、JIS B 9960-1:2019/追補1:2023(IEC 60204-1)、JIS B 9704-1:2024(IEC 61496-1)、JIS B 9715:2013(ISO 13855)、JIS B 9714:2024(予期しない起動の防止)です。

  • 欧州・米国の制度

EUでは Regulation (EU) 2023/1230 が機械規則として公表され、米国では ANSI/A3 R15.06-2025 が ISO 10218の国家採用規格です。他方で OSHA はロボティクス専用の個別規格がないことも明示しています。

  • 日本の法令実務

労働安全衛生規則第150条の3〜5で教示等・運転中の危険防止・検査時安全が扱われ、特別教育の整理では、教示等の業務に学科7時間・実技3時間、検査等に学科9時間・実技4時間という運用情報が労働局資料で確認できます。協働作業に関しても、2013年通達・パンフレットで安全基準の明確化がなされています。

ここで実務上とても重要なのは、日本で公開確認しやすいJISのロボット安全規格は現在も2015年版(ISO 10218:2011対応)が中核である一方、国際規格側は2025年版に更新されていることです。したがって、国内案件でも、JISと現行ISOの双方を参照しないと、海外設備やグローバル顧客との整合で見落としが出る可能性があります。現場の安全設計では、ガードや柵だけでなく、安全監視機能付きロボットオプションの活用も重要です。

ただし、これらは「柵が不要になる方法」ではありません。協働ロボットであっても、リスクアセスメントなしに人と同一空間へ入れてよいわけではなく、保護方策、停止距離、侵入検知、異常時の安全停止、再起動手順をシステムとして設計する必要があります。

よくあるトラブルと対策

「シミュレーションでは合うのに実機でずれる」

これは、TCP誤差、ワーク座標誤差、絶対位置精度不足、ツール交換後の再校正漏れ、あるいはビジョン-ロボットの対応関係ずれが原因になりやすいです。対策は、プログラムを直す前に、①原点/マスタリング、②TCP、③ユーザー/ワーク座標、④センサ座標の順で疑うことです。コードをいじる前に基準系を疑う、という順番を徹底すると、無駄な手直しが激減します。

ビジョンピックの不安定化

再校正直後は取れるのに、照明が変わるとミスピックする、あるいはコンベヤ条件変更で追従誤差が増える、といった症状です。これはビジョン導入では認識そのものよりも、校正、照明、搬送同期、ロボットとの座標統合が支配的要因になります。対策は、カメラパラメータではなく、校正手順・治具・照明条件を標準作業化することです。

力制御が安定しない

よくあるのは、接触直後に振動する、押し付け過多になる、思った方向へ逃げない、ゼロ点が流れる、といった症状です。これは、センサフレームの向き違い、ゼロ取り不良、押付け軸と逃げ軸の設計不足、アプローチ速度過多である場合が多いです。

ロボットティーチングの効率化について

再利用できる構造を最初から埋め込む

プログラムのパターン化は時間短縮だけでなく、ミスの削減にも繋がる
プログラムのパターン化は時間短縮だけでなく、ミスの削減にも繋がる

ティーチング時間を短くする最短経路は、巧みな手作業ではなく、再利用できる構造を最初から埋め込むことです。具体的には、相対座標化、ユーザフレーム化、ツールライブラリ化、パターン生成、点列の命名規約、I/Oハンドシェイクのテンプレート化、バックアップ手順の標準化です。

パラメータとプログラムを分ける

仕様変更やトラブル対策として、パラメーターとプログラムを別にする
仕様変更やトラブル対策として、パラメーターとプログラムを別にする

二つ目の要点は、パラメータとプログラムを分けることです。ピッチ、段数、押付け量、速度帯、タイマ、センサのしきい値をジョブ本体へ直書きすると、品種追加や条件変更のたびにプログラム全体が壊れ不具合が生じます。

安全データも再利用対象とみなす

データや作業手順の共有は、作業の属人化防止に繋がる
データや作業手順の共有は、作業の属人化防止に繋がる

三つ目は、安全データも再利用対象とみなすことです。TCPやワーク座標だけでなく、安全領域、停止カテゴリ、侵入時の振る舞い、復帰手順、ログ採取方法までを教示資産として扱うと、担当者依存が減ります。安全領域設定が毎回属人的に変わる現場は、立ち上げよりも保守で大きく損をします。

導入時の確認事項

導入時のチェックは、機械購入後ではなく、仕様締結前から始めるべきです。最低でも以下のポイントを先に決めておく必要があります。これらが曖昧なまま導入すると、教示作業が仕様の穴埋めになり、立ち上げに必要な工数が増大します。

  1. ワーク・治具・工具の3Dデータ有無
  2. 求める品質公差とサイクルタイム
  3. 手動作業のどこを自動化しどこを残すか
  4. 必要センサと環境条件
  5. 安全構想と作業者の動線
  6. 復旧手順とバックアップ体制
  7. 特別教育・メーカー教育の受講計画
  8. 受入試験条件

ティーチングの各フェーズでの確認事項

フェーズ 確認項目 見落とすと起きやすい問題 記録しておくべき内容
教示前 作業手順・非常停止・入退場ルール共有 危険エリア侵入、再起動時混乱 作業許可、担当者、停止手順
原点/マスタリング/ホーム位置確認 すべての位置が系統的にずれる 原点確認日時、結果
TCP再確認 姿勢・接近方向・加工位置の一括ずれ 使用ツール番号、校正方法
ユーザー/ワーク座標確認 品種切替や治具交換で全点ずれ 座標名、生成点、基準治具
ペイロード/重心設定 挙動不安定、停止頻発、速度低下 質量、CoG、設定ファイル
教示中 接近点・退避点から先に作る 直行で衝突、復帰不能 退避ルール、共通点名
補間方式を工程ごとに選ぶ ビード乱れ、挿入失敗、角部過走 Move種別、ブレンド条件
特異点・関節限界を監視 急減速、姿勢反転、ケーブルに負荷 問題区間、回避方針
I/O・ハンドシェイク確認 チャック不良、設備競合、取りこぼし 信号一覧、タイミング
センサ校正・照明/ゼロ点確認 ミスピック、力制御不安定 校正日、条件、許容差
教示後 低速ドライラン→量産速度試験 低速では良いが本番で失敗 速度別結果、修正履歴
安全領域・停止動作・復旧手順確認 安全停止乱発、復帰不能 安全設定版数、承認者
バックアップ・版管理・引継ぎ 再現不能、属人化 プログラム版、設定版、保存先

この表は、法令上の教示時安全要求、各社公式マニュアル/研修が扱うTCP・座標・I/O・Teach Check・シミュレーション項目、ならびに安全監視オプションの一般的な運用要件を統合したチェックリストです。

ロボットティーチングの基準精度を上げるメトロールのタッチプローブ

ロボットティーチングにおいて、「どこを基準に教示するか」はすべての精度の出発点になります。特に、治具交換や段取り替えが頻繁に発生する現場では、毎回の原点出しやワーク位置の再現精度が、工程全体の品質と立上げ時間に大きく影響します。

こうした課題に対して有効なのが、接触式で高精度な位置検出を行うタッチプローブの活用です。メトロールのタッチプローブは、ロボット先端や機械軸に取り付け、対象物に「触れる」ことで位置を検出するデバイスです。光学式センサのようにワークの色や反射率、周囲光の影響を受けにくく、安定した検出が可能です。

製品ページはこちら:https://www.metrol.co.jp/touch-probe/

メトロールの位置決めセンサの製品ラインナップ

高精度位置決めタッチスイッチ(位置決めセンサ)

高精度位置決めタッチスイッチ(位置決めセンサ)

接触式の高精度スイッチで、工作機械やロボット、治具などの位置決めやワーク有無検出に用いられます。最大繰返し精度0.5µmと極めて高精度で、IP67の防水防塵性能を備え、悪環境下でも安定動作します​。200種類以上の標準モデルがあり、狭所対応、高温対応、真空対応、低接触力タイプなどバリエーションが豊富です​。

ツールセッタ(工具長測定センサ)

ツールセッタ(工具長測定センサ)

CNC工作機械や産業用ロボットに搭載し、工具長の測定や原点位置出し、工具折損検知などに使用される接触式センサです​。工具の長さや摩耗、熱変位を機内で自動測定・補正することで加工不良を防止し、段取り時間を大幅短縮します​。世界74ヵ国で50万台以上の出荷実績があるメトロールのベストセラー製品です​。

タッチプローブ(機上測定プローブ)

タッチプローブ(機上測定プローブ)

工作機械やロボットに搭載し、加工前のワーク位置決め(芯出し)や加工後の寸法測定を自動で行う機内計測用の接触式プローブです​。繰返し精度1µmでワークの基準出し・寸法検査を自動化し、熟練者の手作業を置き換えることで段取り時間短縮や加工不良防止に貢献します​。有線式と無線式(ワイヤレス)のモデルがあり、5軸加工機やロボットへの後付けニーズにも応えています​。

エアマイクロセンサ(空圧式センサ)

エアマイクロセンサ(空圧式センサ)

空気圧を利用した非接触センサで、ワークの着座状態を数ミクロン精度で検出できます​。従来は困難だった10µm以下の隙間(「浮き」)を±0.5µmの繰返し精度で検知し、ワークと治具の密着不良による加工不良や設備のダウンタイムの発生を防止します​。半導体製造プロセスや精密部品のクランプ工程、研削盤の砥石位置合わせなどで活用され、国際標準のIO-Link通信にも対応したスマートセンサです​。

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